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歩いて

▼2002年 5月 1日 (Wed) -- No.[387]

アメリカに来る前の夏、僕はよく歩いていた。文字通り足の親指と他の4本の付け根の間でソール越しにアスファルトを感じながら、僕は一時期ではあったが歩き続けていた。

わかっていた事とは言え、頭をからっぽにしたい出来事が起こり、僕はある日、東京の郊外にあった友人の家から山梨の自宅まで徒歩で帰る事にした。体力を消耗させ、余計な事を頭からはじき出す為だ。その友人と遅くまで話し込んだ時のただの思い付きで、もちろん初めから歩くような格好などしていない。靴はローファー、手にはトートバック。そのまま電車で大学へ出かけるような服装だろう。当時、大学卒業後に時間を持て余していた僕の友人も同行する事に。僕は今でも、後々彼は必ず成功する人間だと思っている。

距離にして約90キロ。その間にメイクで顔と首筋の色が極端に違う名の知れた演歌歌手に会ったり、酔っ払いの占い師に僕の人生を占ってもらったり、また目の前で悲惨なバイク事故を目撃したり。今考えても、日常生活では中々味わえない密度の濃い2日間だった。残念ながら最後の残り7,8キロと言う所で疲れ果てて電車に乗り、ゴールとしていた自宅まで歩き通す事は出来なかった。それでも歩き疲れてむくんだ足に、ある程度の達成感はしっかりと残ったと思う。

映画でトム・ハンクスがそうしたように、僕はその2日間をきっかけとして突然歩き出すようになった。炎天下のもと、毎日最低3時間は歩いていた。所用で出かけた時には駅を一駅、二駅手前で降り、または乗り過ごして歩く道を探す。きっかけとなった90キロの行程で踏破できなかった最後の2時間も、結果的に2回に分ける事になったが最後まで歩き着いた。早いもので今度の夏は、それから数えて4回目の夏だ。

突然そんな事を思い出したのは、車が故障したおかげで教室まで歩く生活を余儀なくされているからだろう。歩いていると普段目に止まらない景色が見える。毎日新しい発見がある。陽気も暖かくなり、Tシャツに感じる風が気持ちよい。車だと不思議と急に感じた坂も、実際歩いてみたらそうでもなかった。

そして僕はまた歩こうと思っている。晴れて大学を卒業したら、およそ1ヶ月を費やして相当距離のトレイルを踏破する計画。今回は一人旅になるかもしれない。そこを歩き終えたら、疲れ果てた僕の足には一体何が残るのだろう。

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