中野パペラ(その3)
▼2003年 3月18日 (Tue) -- No.[476]
2003/03/15(土)続き
チキンカレーの舌触りが微かに口の中に漂っている。しかしこれまで4種類のカレーを味わっている途中では、まだ辛さを抑えるヨーグルトに俺の手は伸びなかった。チキンの刺激に対して本能的に左腕がピクリとしたとは言え、俺は無意識の内に動いていた左腕を、右腕の理性で押さえ込んでいたのだ。オーケェィ、一度ここで仕切り直すのも悪くないアイデアだ。俺はここで初めて自らの意思と共にヨーグルトドリンクを手に取った。
完全に落ち着きを取り戻した俺は、続いてナッツが入ったような米(サフランライス)とカレーを、フックの効いた絶妙な手さばきでサジに乗せる。一流の職人が量ったように2:3の割合だ。え?何だと…?
カレーが「3」に決まってるじゃねえかボゲー!予想していたとは言え、ライスと共にほお張ると辛さは半減するぜ。2種類あるサラダにも順に手を伸ばしたが、一般的なグリーンサラダの他にある、生の玉ねぎがカットされたこのサラダは何なのだろう。これはパキスタンでは伝統的なカレーとの盛り合わせなのか。さながら日本でいう副腎漬け、あるいは井出らっきょだな。しかし俺を納得させるには10年早い。悔しかったら理詰めで来い。理詰めで。
一見無造作だが、計算され尽くした上で配置されている皿たち(ここでも自らの持つ審美的な側面が見られる)を一通り味わった俺にとって、次は男の根性を見せる番だ。テーブルに添えられているブラックペッパーとチリペッパーを色が変わるほど降りかけた。しかしこれだけじゃオワンネェ。実は入り口に偉そうに掲げられていた「食べ放題」という看板。これが俺に火を付け、カレーという名のガソリンを含んだ俺の血潮は、もう誰にも抑えきれない程熱く煮えたぎっていた。消防車だ!ついでに救急車も呼んどけ!俺を挑発しやがったこのカレー屋。俺は「最低3回往復」という報復活動に出た。
ここまで来たら食いまくるしかない。俺は羞恥心さえ無くしてバク食いした。時には周囲の視線を気にしない勇気も、何かを成し遂げる過程には必要なのだ。軽く1度目、2度目のカレー壷往復作戦を終える。言うまでも無くその度にサフランライスとナンも追加していた。一度テーブルに運んだものをきれいに片付けてから、次なるターゲットへ流し目を送るのが俺の流儀だ。
既に大粒の汗が噴出している。駅前でサラ金のポケットティッシュを数個ふんだくって来た甲斐があった。そして俺はこのタイミングを計り、コーヒーで口を濡らす。カフェインを注入して胃の活動を助けるのだ。この様な戦いでは外から攻めるのも大切だが、実は内から攻める効果が絶大。フフ、「敵の前に味方を騙す」、先人たちも賢く言ったものだ。(続く)