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マルチ

▼2003年 3月23日 (Sun) -- No.[478]

数週間ほど前、友人の誘いでとある「商品」についての説明会に出かけてきた。"Multi Level Marketing"いわゆるマルチ商法。長野オリンピックの公式スポンサーにも、この類の会社が含まれていた記憶があるから、世間でもある程度は認知されていると思う。僕は過去にやはり人から誘われた事はあったが、そういうのを実践する事に関しては縁が無かったし、何回か彼にその話を聞いても興味が沸くことも無かった。しかしながら彼の熱心な誘いで、折角だから話を聞いてみようと思った訳だ。僕は彼とその考え方を熟知しているつもり。それもあって、一体何に対して熱を上げているのか純粋に興味があったし、またこの手の商法もどういう仕組みになってるのか、この目と耳と頭で確かめる意味合いも強かった。結論を先に書く。体への有効性を中心とする商品の説明の前半と、ビジネスの可能性について説く後半。休日の午後、4時間近く及んだセミナーに参加したが、その内容(商品とビジネス)は僕を揺さぶるほど強烈では無かった。「騙されたと思って」やってみようとも思わなかった。

その健康商品は目に良いとされているもので、セミナー会場には盲目の人も訪れていた。丁度彼女が子供の肩に手を乗せ、白い杖を付きながら僕の横の階段を上っていってからすぐにセミナーが始まった。前半は商品を定期的に取っている人たちが、いかに体調が良くなったのかという体験談や、成分の詳しい説明と共に何がどう効くのか、イラストを使用した解り易い説明が続いた。目だけでなく、ダイエット、花粉症、糖尿病、神経不随、頭痛、生理痛、便秘などなど、誰でも思い当てはまる事に対しても効果はあるそうだ。壇上のスピーカーはテンポの良い話の運びで、時にシリアスに、また時に笑いを誘い、聞いていて面白かった。10分の休憩を挟んで後半のビジネス部門へ突入。休み中に盲目の女性は再び子供に手を取られて会場を後にする。彼女にとっては金儲けの事など関係ない、純粋に視力が戻れば。マルチ商法を規制する法律は確かにある。が、実際に良く行われている商法は、条文の内容と少しだけ違ったりして、厳密には法に当てはまらない形で慣行されている。この商品に関しても、同様の仕組みが組まれているようだ。前半と同じスピーカーが、今度は頑張ればいくら儲けられるのか熱心に語っている。周りを見渡すと、真剣な眼差しの出席者は彼の一言一言に対してウンウンと頷いている。僕はそれが無性におかしく笑いそうになってしまった。そんなこんなで午後1 時から始まったセミナーは、夕方5時前に終了。

確かに効果がある「かもしれない」というのは良くわかったし、金儲けができる「かもしれない」というのも良くわかった。でも僕は結局そのスピーカーが信じられなかった。世界中には目が見えなくて、体が悪くて、本当に困っている人たちが沢山存在している。彼とその会社が絶対的にその商品の効力に自信があるのであれば、なぜ「口コミ」みたいに小さなセミナー会場でコソコソ説明せず、マスコミ媒体を経由して世間に知らしめないのか?自社の製品で人を沢山助けられる喜びを得ようと思わないのか。それにそんなに効力のある商品は、どうして薬事法を経由した本来の「薬品」ではないのか。盲目の女性が帰った後、後半のビジネスに関する説明の時、「ビジネスを本気でやろうとする人」に商品を紹介しなさい、と言ったスピーカー。目の見えない人はここでは関係ない、体で困ってる人はその次だと言い切ったスピーカー。視力に障害があって本当に困ってる人はきっと藁にもすがる気持ちで、彼の話を聞いていたのだろうに。僕は実際に会場にいた盲目の女性の事を考えたら、とても悲しくなってきた。このセミナーを紹介してくれた友人には悪いが、むしろ怒りさえ覚えた。もしかしたら僕はここで大きなチャンスを逃したのかもしれない。確かに僕は目が悪くて、めがねやコンタクトを使用している。もしかしたらそのコンタクトもいらなくなったかもしれない。それでも僕はスピーカーの人間性が信じられなかった。

その商品を出している会社のウェブページから引用する。
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私たちがいう健康とは、身体的兼行(肉体的健康)に留まらず、精神的健康(心の健康)、社会的健康(社会性)、家族的健康、経済的健康、も含めて意味するものであり、その目的を理解する愛用者と一体となつた流通システムの構築により、多くの人々への普及と社会への還元をする事を第一義とします。
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僕がその友人と知り合ってから4年ほど経過している。彼もその商品の愛用者だが、「自分にはまだ効果が出ていない」と言っていた。しかし僕は彼に大きな効果が既に出ていると思う。僕の知っているつい最近までの彼は、決して活発とは言えない性格の持ち主だった。言葉を変えると「暗い」とも言えた。しかし彼がこの商品に出会い、ビジネスに関しても本気で取り組んでから、彼は見違えるほど活発になっていた。それは話していても良くわかるし、彼の行動を見ていてそう感じる事が出来る。彼は変わった。それならそれで良いんじゃないか。

ウェブページの引用通り、彼にとってはとても良い商品であったと僕は思う。

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