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山手線を一周




今年の春先、思いついたまま山手線を一周歩いたことがあった。僕が以前主宰していたウェブページにその様子を書いた記憶があるので、もしかしたら読んだ人もいるかもしれない。



改めて書く。8時間かけて歩いた直接の動機、それは僕がアメリカによるイラク侵攻のニュースに、やり場のない違和感を覚えたからだ。一見無駄な行為に違いない。「それで何を得た?」と人に問われても、僕は明確な返答に迷ってしまう。ただし断言できることがあるならば、絶えてしまった命は歩くことができないという事。歩き終えた後、体に残る心地よい疲労感も、彼らは決して味わうことができない。



5年ほど前からだと思う。僕は突然歩いたり走ったりという基礎的な運動行為に、人より多く時間を割くようになった。東京の郊外から山梨の実家まで徒歩で帰ったり、プールで全く休まずに3時間以上泳ぎ続けてみたりした。山の中を3週間以上彷徨ったこともあったし、つい最近は徒歩ではなく、走って山手線を一周した。それで何を得た?



失われた命が決して持てない、「生きている」という実感。しかし歩き、泳ぎ、走り続けても、強烈な印象を伴う経験を得られる訳では決してない。人によっては達成感が残るかもしれない。でも多くの場合、そこには何も残らないのだ。自分が費やした体力と時間の対価。足し算と引き算と掛け算と割り算を繰り返した結果が、最終的にゼロと弾き出された時、僕らは自分自身の存在を、改めて問い直すことになるだろう。



そしてそれこそ人生だ。







■ワタナベ「撲殺」→「忙殺」の誤りです。指摘ありがとう。

..2003/09/10(Wed) 22:59 (7)




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