BSE騒動
いわゆるBSE(狂牛病)騒動で、アメリカからの牛肉の輸入が前面的に凍結されている。天下の国営放送がニュース番組で吉野家の派手な看板を映し出す。「最後の牛丼を追え!」的な血沸き肉踊るレポートも相まって、こりゃ一大イベントだよオイ。どこかの店長さんが涙ながらに「牛丼の販売を停止しました」、という看板を出す姿にはちょっと笑えたが、なぜか僕自身も形容しがたい感動を覚えてしまった。
僕は「週に5回は食ってたのでサミシっす」、とインタビューに答える若者のような食生活を営んでいないので、彼らのような終末論的途方に暮れることは決してない。しかし牛丼屋各社がこの危機的な状況をどのように克服するか、には多少興味があった。その多くは、看板メニューである牛丼切れを想定し、違うどんぶりものをお品書きに加えているのだ。これは食わねば!とりあえず吉野家D&Cと松屋フードサービス、この大手2社が繰り出した、めくるめく新規メニュー対決をしてしまった。
牛丼へのこだわりが一番強そうな吉野屋は、「カレー丼」、「鮭いくら丼」、「親子丼」を発売。一部の店舗では「マーボー丼」も出していると聞く。僕は最初の3つをトライ!続いて当初よりバラエティ豊かなメニューを揃える松屋。こちらは「豚丼」のサーブ開始。いつからあるのか知らないが、「鳥唐丼」みたいなのもあったので、僕はとりあえず食ってみた。そして僕が勝手に判定を下すと・・・。
完全に松屋の勝ち!
吉野家は「どんぶり」という器の姿形にこだわった結果、メニューの幅を狭めて墓穴を掘った感がある。「カレーライス」ではなく、「カレー丼」を出したのが、その失敗の象徴ではないか。冷静に分析すると、「どんぶり」以外の器を使うメニューが少ないので、歴史と伝統に比べてノウハウが蓄積されず、応用が利かなかったのかもしれない。そして肝心の味。何と言うかこれが悪い意味で万人ウケを狙いすぎ。パンチの効いたスパイスや、思わず舌を確認したくなる内容物もない。結果的に日本国民が再び同じメニューをオーダーするとは思えないのだ。
対する松屋は元来幅広いメニューを揃え、今回の新規メニューもその開発の一環、という肩の力が抜けたスタンスが見て取れる。吉野家ほど「牛メシ」のこだわりがなかったのも、良い方向に作用したはず。「豚メシ」はさっと煮立てた柔らかな豚肉に、伝統的な生姜焼きの風味を加えた絶品だった。味ベースで考えるとこの「生姜」のひと味が、吉野家に欠けている絶対的な部分なのだ。これならまた味わってみたくなる。ただし、残念ながら「鳥唐丼」はイマイチだったのですぐに消えるはず。しかしこれはこれで良い。彼らはまた新たなメニューを世に送り出せば良いだけなのだ。
「牛丼と言えば吉野家」という長年の月日で形成された世論を変えるのは難しい。しかし今回の騒動を転機として、業界内で両者の位置付けは微妙にシフトしたかもしれない。今日現在で大手4社(上記2社+なか卯+すき家)の牛丼販売は完全にストップした。牛肉輸入の全面禁止措置は解除の目処が立たずにこう着状態が続き、この状態に劇的な変化が見られるとは考えにくい。吉野家の新メニュー第2弾で業界にさらなる荒波が立つのか、それとも豚メシの定着で松屋が勢いを増すのか、他社の対応はどうか。今後の対応が大いに注目される!
と、外で人に話すのもアレなので、僕の小さな世界で考えてみた。