Paris, Texas
米国のテキサスを舞台にしたロードムービー。1984年の西ドイツとフランスによる合作。主演はHarry Dean Stanton。監督はWim Wenders。
荒涼としたアメリカの大地で自己回帰を試みる主人公。記憶を無くした彼がかつての存在意義を再構築する旅。自分が生を受けた場所、弟夫婦の元に身を寄せる一人息子、そして行方不明の妻。それらを手繰り寄せながら、一度は失ったアイデンティティーを取り戻していく。
これほど映画らしい映画を観たのは久しぶりだと思う。アメリカ人では決して作り出せないアメリカ映画かもしれない。ハリウッドの大作では表現できない濃縮された人生の機微を、当初は言葉すら失っている主人公が雄弁に語り続ける。広大なテキサスで主人公が最終的にたどり着いた小部屋。風景の異なるこちら側と向こう側。部屋を隔てる一枚の壁は、失った後に取り戻せるものと、取り戻せないものを隔てる象徴なのかもしれない。劇中に挿入されるRy Cooderの情緒的なスライドギターに鳥肌が立つ。
終わらないで欲しいと思いながら観た。4.4(5点満点)。