10年ひと昔
普段の帰宅経路を変え、大学1,2年生の時に通ったキャンパスの最寄駅に立ち寄ってみた。京王井の頭沿線の小さな駅を出て、当時通った大学への道を行く。記憶として頭に残された風景と、社会人となった僕の目に映るその風景。重ならない二つの地図。
当時、確か大学へは駅を右に出て麻雀屋の角を曲がり、左手に蕎麦屋、右手にビリヤード屋を眺め、別の麻雀屋で終わる狭い道が伸びていた。国道20号にぶつかり、歩道橋を渡るとその先はキャンパス。僕はそう記憶している。
現在、その狭かった道は拡張されていた。ゴチャゴチャした路地は区画整理を経た後、大きなマンションが建設。僕の記憶の中にあった景色はほぼ全て消滅していた。1Fにファーストフード店が入り、かつてビリヤード屋があったあたりには、カフェが3店も軒を連ねている。小奇麗なレストランも開業していた。僕は国道20号線に出た。幸いにも大学はまだそこにあった。
忘れかけていた記憶がよみがえってくる。麻雀屋に「登校」してくる友人がいた。そこから歩いて数分のキャンパスには一歩も足を踏み入れず、授業にも全く顔を出さない男だった。彼は今どうしているのだろう。
思い出を手繰り寄せながら、かつて勝手に「麻雀通り」と呼んでいた小道を振り返ってみる。大きく食い違う過去と現在の二つの風景。恐らく目隠しをして突然その場に放り出されたとしたら、僕は全く別の街だと勘違したに違いないだろう。カフェでくつろぐ学生達が目に入る。しかし同じ場所に立っていた僕が見た風景を、彼らは全く知らないのだ。彼らはこの先大学を離れた後、再びこの場所へ足を伸ばす事があるのだろうか。
そして彼らもまた、今の僕と同じ感覚にとらわれるのだろうか。僕が次にここへ来るのは何年先なんだろう。