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思い出は美化される

過去に経験した引越しで一番記憶に残っているのは、学生時代の後半を過ごした中野から転出した時である。

中野には1998年まで約2年ほど住んでいた。場所はJRと西武線の中間で、僕は主にJR中野駅を利用。駅を降り、日本でショッピングモールの草分けと言われる建物に進む。地下のマーケットで買い物をし、新井薬師への参道が発展した商店街へ。銭湯を横目に見ながら豆腐屋の角を曲がり、戦争で焼けずに昭和の面影が残る小道を抜け、2階建ての木造アパートに辿り着くのだ。大家さんは歴史のある煎餅やさん。近所には落ち着いて腰をおろせる喫茶店や、活気溢れる八百屋や魚屋、のれんを垂らす昔からの一杯飲み屋などに囲まれていた。のんびりと散策するのに最適な街だった。とても穏やかで、とても楽しかった。何より当時のガールフレンドや友人たちの存在が、生活の全てを思い出深いものにしてくれている。

地理的に中野の隣、高円寺。今現在の僕が住んでいる街である。ここに住むようになって、何時の間にか3年近くが経過してしまった。そして僕は今週末、この場所を離れることになっている。単純に比較は出来ないし、したくもないが、この街も僕にとって思い出深い街になるに違いない。

ひと月以上の物件探しと、20の内見を経て、今の住処に落ち着いた2004年の僕。会社の引越しと個人の引越しを敢えて重ね、たった一日で出る場所と行く場所を変えたあの時。引越し前に訪れた部屋の下掃除を、僕は何故か鮮明に記憶している。駅を南側に降りた道すがらで掃除用具を揃えた。とても寒い夜だったのに、エアコンの入れ方がわからないまま掃除をし、終わった後は冷えたコロナで新しい生活を想像して乾杯をした。暖かい食事をしたくて入ろうとしていたうどん屋さんが、閉店時間を迎えていた。

その時に履いたフリースの靴下が、押入れの奥から出てきた。

中野から出た時、実家の父親が軽トラックで手伝いに来てくれた。作業が終わってガランとした部屋をゆっくりと見渡す。伸ばした視線の端々から、数時間前まで何かに帰属し、同一であり、何よりリアルであった出来事が、突然現実から切り離され、形を失い、過去の思い出となって浮かび上がってくる。「先に乗ってて」と父親に伝えた僕は、とてつもなく大きなものを失ってしまった焦燥感に駆られ、何も無くなった部屋に独りで取り残されていた。窓からの風景をぼんやりと眺めながら、最後にタバコの煙を吐き出す。意識的に笑顔を作ってから、僕は部屋を後にした。

そのアパートは既に改築され、当時の面影を無くしている。

僕は高円寺を出る時に何をして、何を思うんだろうか。忘れ物は、思い出だけです。思い出は美化される。

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コメント

これは自分で言うのもなんだがクサイ文章だ!ぽっ

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