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事実は小説より奇なり

君は痴漢の捕物に遭遇したことがあるか?僕はあるぞ。これは犯人には悪いけど、見ててかなり面白く(ここ何年かでもしかしたら一番面白かった!)、かつ彼が哀れでたまらない風景であった。昨日の帰宅時、いつものように混雑した電車を降りた僕。最寄り駅は沿線で唯一の地下駅。僕はいつも通り上りエスカレーターに乗り、改札に向かおうとしたのだが・・・。

僕が上りエスカレーターに乗る順番を待って、モゾモゾと揉まれている時のこと。ブラックスーツに身を包んだ30歳くらいの茶髪男が、何かから逃げるように猛ダッシュしてきた。遠くで大きな声が聞こえる。痴漢して逃げてんだな、と瞬間的に理解した僕。男はもちろん逃げるために改札出口に向かっているようだ。そして彼は僕の予想をはるかに超える行動に出たのだ!

何が面白かったかというと、男は何を思ったか、地上の改札口に出るため、「下り」エスカレーターに走りこんのだ!「あーエスカレーターに足を置いた瞬間、絶対にこけるな」と思ったとたん、やっぱり男は派手にこけた。あまりの予想した通りの展開におかしくなった。パニックになって、空いてるスペースに逃げ込みたい一心だったんだろうな。それでも男は頑張って「下り」エスカレーターを駆け上がろうとする。この様がとてつもなく面白かったゾ。ちょっとぽっちゃり目の男。「絶対上まで足の回転が持たないな」と冷静に考える僕。男は頑張って2/3くらいまで上がったあたりで、予想通りにまたこけた!そしてうつ伏せ状態で「下り」エスカレーターで降りてくる!

徐々に大きく聞こえてくる後ろからの声。男は立ち上がってまた駆け上がろうとする。「あと何回かこけるな」と冷静に観察する僕。そして今度は4/5までたどり着いてまたこけた!そしてまた、べたーっと自動的に下ってくる!

上に視線を延ばすと、「下り」エスカレーターに乗ろうとする客が、乗り口で足を止めている。男を見下ろし、「一体こいつは何をしているのだ?」という唖然とした表情だ。

下から見上げる僕。男はめげずに立ち上がり、「下り」を駆け上がるのだが、でも足がもつれて動かなくなっているのが傍目にもよく分かる。それでも残りちょっとで上にたどり着きそうな位置までやってきた。でも「エスカレーターが水平になったあたりで、絶対にこけるな」と確信的な予想を立てる僕。そしたらやっぱりこけた!あまりに予想通りの動きをする彼がものすごく面白く、かつものすごく哀れに見える。もうひと息なので、男も必死である。やっとか!やっとか!と立ち上がって足を運ぶ。そして水平になったあたりで、やっぱりこける!やっぱり自動的に降りてくる!立ち上がる!水平!こける!降りてくる!まるでハムスターのようだ!立ち上がる!水平!こける!降りてくる!あまりに面白すぎて、面白くないくらい、面白かった。

と、コントのような男の姿は、「上り」エスカレーターで上がり、折り返してから、「下り」エスカレーターで降りてきた追手に取り押さえられたのだ。事実は小説より奇なり。スリルとサスペンスとコメディを同時に高いレベルで見てお腹いっぱいです。

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