山さん
ちょっと前の日記で車を手に入れたと書いたので少し補足する。田舎で生まれ育った僕にとって、前から車は必要だと絶対的に思ってた。この話が始まるのはぴっかぴかの新車を買う余裕などないし、とりあえず中古で探してみようかと思っていた数ヶ月前のこと。たまたま実家の父親と話した時、車使ってないからあげるよー、という思いも寄らなかったオファーが。そうは言っても田舎で車は必需品だろう、と思ったのだが、話を聞いてみると本当に使ってないふうなのだ。
父親は今年3月に見事に定年を迎えた(お疲れ様でした)。それまでは毎日通勤用に車をドライブしてたのである。で、4月以降。時々であるが、これまでと同じような仕事に行ったり、趣味と実益を兼ねてお米をみたり畑に出たりのスローライフ。しかしそれらは母親の軽、もしくは別にある軽トラですべて事が足りてしまうそうなのだ。結局それまで使ってた自分用の車のシートに座る機会は激減。実際、たまには乗ろうと思ってクランクしたら、バッテリーがあがってたほど(ジャンプスタートした)。
ちょっと大きめの車で、小回りが利かないから東京で乗るには大変な部分はある。でも使わないのはもったいない。せっかくだからその好意に甘えよう、という結論に落ち着いた。マンションの駐車場には空きがないから近くの手ごろな場所を探して契約。肝心の車はタダでもらうのもどうかと思ったので、いくらかお金を包んだ。そして数週間前、実家に取りに行き、運転して帰ってきたのだ。
「山さん」と命名。これはもちろんこのあたりに珍しい山梨ナンバーに由来している。今住んでいるのは都内でも有数な高級住宅地に接している。この「接している」というのが、なんちゃってな匂いがして僕的には良い。結局は普通の住宅地なので、僕が借りた駐車場は普通の車しか停まっていない。でもちょっと出るとそこは高級車が並ぶワンダーランドだ。そしてそこを、我関せずと走り抜ける場違いな山梨ナンバー。そんな世界に誇る車は僕んちの1台しかないのだ。
これまでの人生で歩いたことしかない場所を走ってみよう!と、先日新宿のアルタ前とか渋谷の交差点とか銀座とかを山さんで走ってみた。まさか山さんもこんな都内を走ることになるとは思いもしなかったはずだ。そして何が良いかと言うと、多少モタモタ運転してても「山梨ナンバー」という事で、堂々とモタモタできることだ。
行動範囲が広がるかと思ってた。確かに行動範囲が広がった。でもそれ以上に、今まで見えなかったもの、ほんのちょっと出るだけで触れられるこれまでと違うもの、ごくごく近所のでもこれまでと確実に違う世界を感じるのがとてもうれしい。今日は山さんを駆って二子玉川の高島屋に行ってみた。これまでだったら公共交通機関を利用し、上ったり下りたり歩いたりして、たどり着くのに結局1時間くらいはかかってた場所である。でも車だったらプライベートなスペースで数十分の距離。
ちょっとセレブな感じの街。そして駐車場に並ぶ車は高級外車ばかり。でもそこにどんっと居座る山さんに、僕はなんだかとっても親しみを感じるのです。