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営業再開したいせや総本店

吉祥寺のいせや総本店が営業を再開した、と新聞か何かで読んだので、早速出かけてみた。今さっき調べてみて知ったんだけど、復活したのは6月4日だったのか!店頭にはお祝いの花とか飾られてたくらいだから、本当に再開ほやほやだったんだな。

昔は小汚い木造二階建ての昭和を感じる建物であったが、新しい店は14階建てのビル。やきとり店舗はその1、2Fである。昔の建物を意識した変てこな外壁デザインだ。でも個人的には不思議と違和感がない。なぜだろう?そう言えばなんかこういうの観たことあるな、と思ってたら僕が卒業した大学の新校舎とか、新丸ビルとか、昔のデザインを一部取り入れた外観設計ってそこそこあるんだよねー。いせやビル(本当の名称は知らん)の3Fより上はオフィスとか、また分譲マンションにもなるという。こんな焼き鳥やが下にあったら、上は煙で大変なことになるんじゃないか。ゴキブリとかもすごそうだ。

土曜の夕方というゴールデンタイム。ものすごい人出であった。1Fのカウンターとか人が2重、3重くらいになってたんじゃないかな。2F席への行列に並び、30分程度待ってから座敷へ通された。廊下の位置とかも、実は旧店舗のつくりを微妙に踏襲しているようだ。階段の位置は昔と同じで、数えてないからわからないが階段の数とかも一緒な気がする。通された席であるが、うーむ、今度は畳じゃないのね。板張りで掃除は楽なのかもしれないけど、ダラダラくつろげる畳のままでも良かったんじゃないか。そういえば昔のいせやの2Fには、階段を上がって折り返したあたりに、ふすまで仕切られた不思議な個室(3畳間くらい)があったっけな。一度だけそこで飲んだことがあったが、少しだけ特別な気持ちになったことをふと思い出した。変わって今度の新しいビルの内装は、当たり前だがぴかぴかで、まるっきり普通の居酒屋である。建物は変わっても、前からいるおばちゃんに早速ビールと焼き物をオーダー。

混雑しているからか、焼き物が全然出てこない(トマトとか枝豆とかはすぐに出てきた)。そしてしばらく待ってやっと出てきた串焼きであるが、何か味がしないぞ。しお指定の串で味がしない・・・。要はしおが振ってないじゃないか!しょうがないのでテーブルの塩で味付け。たれ指定の串を含め、味は多分前からと同じだな。僕はここのシュウマイが結構好きなのだが、それも以前と変わらずおいしかった。でも圧倒的に安いなやっぱり。いまどき1本80円って。こぎれいな「焼き鳥ダイニング」とかだったら、創作串焼き1本300円とかするこの時代に。

これまでのいせやは、ある意味小汚いからこそ客が来てた部分がある。うまいといえばうまいが、そこまでうまいわけでもないチープな串焼き。態度の悪い店員の接客を横目に串を手に取っていた僕らは、しかしその1本の背後に積み上げられた50年の歴史と伝統を味わっていたわけだ。端的に言うと、目に見える歴史がそこはあった。失われた昭和が確かにそこにはあり、ノスタルジーにあふれていた。結果的にたいした営業努力をしないでも、これまでも客足は途絶えなかった。いせやが出す串焼きこそ、それは串焼きであったし、それにいせやこそ、吉祥寺という街のシンボルであった。でもこれからは違うのだ。同じ味を出す焼き鳥は世間に沢山あるし、むしろいせやより純粋にうまい焼き鳥を出す店も沢山ある。確かにいせやは安い。でも営業努力でコストを抑えてる店もある。これまで他の店ではなく、いせやでしか味わえなかった体験。それは文字通り、目で見える歴史だった。煙と油にまみれてまっ黒な壁。すりきれた畳。座り午後地の悪いビニールのスツールとか。新しくなったいせやはは、その格を無視した場合、他のありふれた串焼きやと同じである。積極的にいせやを選ぶ理由はない。

この日は営業が再開して間もないこともあって、多少浮ついてる感が否めなかった。僕の感想も「とりあえず行ってみた」という視点であるので、もうしばらくして落ち着いてきたら再度訪問してみたい。いずれにしろ、リピートしたくなる店であることには変わらないですね。それに僕のような若造の感想でなく、むかしっからの筋金入りの客の意見も聞いてみたい。

新生いせやにとって、これからが勝負であろう。お店が新しくきれいになっても変わらない何かを提供してこそこれからのいせやがある。そしてまた、歴史が作られていくのだ。

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